薬の飲み方と上司と部下


漢方薬のメーカーにいました、と言うと、2回に1回ぐらい漢方薬について質問されます。それはそれで決して迷惑だと思っていないのでいいのですが、たまに、面倒な質問があります。

漢方薬に詳しいと聞いたのでちょっと質問があるのですが・・・」と訊かれたこの前は、、何かというと「友人にもらった○○(生薬)が良くてね、もらったものが無くなったので自分で購入したんです。けれど、一度にどれくらいの量を飲めばいいかわからなくってね、お茶にして飲みたいんだけど一回は何グラムか・・?教えてもらえます?」ということでした。友人にもらったそれはティーバッグに入っていて、どのくらいの量が入っていたか見なかったんだそう。

(あのね、買ったところで聞いてよ!!!)

と思ったのは言うまでもなく、さらにわたしのダークサイドから

(わからんのに買うなや!!!)

という声も。
だって当然でしょ?一回量のわからない薬買います?
まあさ、そりゃ生薬だからね、お茶にして飲む人だっていますしね。一概にいえないけれど、その効能を期待して買ったんでしょ?それだったら普通買う時に聞くでしょ?そんなの聞かないで買うなんて・・・・イライラ。

まあきっとその人にも事情があったのでしょう。わたしがイライラしたところで状況は何も変わりませんし、そのエネルギー勿体無いのでご相談に乗ることにしました。


あ、ちなみにそういうの聞けないようなところで買った生薬だったら、むしろ怪しいものもありますのでご注意くださいね(旅行先とか)。信頼できる人が勧めるところの信頼できるものが一番です。生薬は残留農薬の問題を甘く見ない方がいいと思います。



さて、そんな具合で、その場をしのぎ、今は癒し音楽を聴きながら書いていますが、漢方薬には「さじ加減」という考え方があります。

基本的にはその人の中に邪があるので、その邪を追い出すために漢方薬を使うのですが、

① その人の中に発生している(あるいは入っている)
② 邪
という2つの要素を総合して漢方薬を決めるのですね。

① その人の体格や体質、邪が入った時のその人の状態を踏まえた上で、
② どんな邪がどこにどのように入っているのか

それって、100人100様で、基本的に同じってことはほぼありません。
けれど、例えばこのブログによく出てくる「葛根湯」は一種類ですよね。じゃあどうするのか?

そこで、さじ加減なんです。
この人は今こういう状況でこういう邪が入っているから、この葛根湯をこんなタイミングでこのくらいの量を飲んでもらおうということです。

日頃元気にイキイキしている人に入る邪と、入退院を繰り返している人に入る邪は邪の強さが違うんです。だから、その邪の強さや状態に合わせて量を調節するのがさじ加減です。そしてまた服用する人も、その薬が自分にどう効いているのかをしっかり感じ取ることが大切です。

漢方薬の処方は双方向のやりとりです。白馬の王子さまのようにキラキラした誰かが、これを飲めば治るよ、なんてこたあ、漢方ではないんです。良くなったという目に見える結果も大事だし、服用して「あ、もう要らないな」という体からの微細なメッセージを受け取ることが、漢方薬服用時の本当に大切なポイントです。

漢方薬で最近副作用報告が増えつつあるのは、そういう、西洋薬的に服用する人が多いからでもあり、またドクターもそのように処方するからというのも一因ではないかと思います。

というわけで、冒頭のようなシーンではわたしは「ご自分が心地よい量を探してみてはいかがですか」と申し上げています。だって、急にそんなこと聞かれたって、その人のこと何も知らないもの。

マネジメントでもこういう状況あるなあと思っていて、上司は部下に仕事を振るのが仕事ではない。部下は上司から仕事をもらうのが仕事ではない。仕事という物質を介したやり取りから、上司は部下という人を理解しようとし、また部下は上司に対して仕事から何を学び取ったのかシェアする。

立場にかかわらず自分の成長・お互いの成長を支援し、確認し合うことができるチームは、強いなあと思うのです。

今日もお読みくださりありがとうございました。



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教養の歴史(知識)がわかります。
そして、あなたはリーダーとして歴史から何を学びますか?と問うています。