漢方的マネジメント論

「あー風邪ひいた」どんなときにそう思いますか?
寒気がするとき?喉が痛いとき?熱があるとき?どこか痛いとき?

前回も書きましたが漢方ではカゼ(風邪)のことをフウジャ(風邪)と呼びます。「風(フウ)」という種類の「邪(ジャ)」が体に侵入したために体内のバランスが崩れて、寒気がしたり喉が痛くなったり、お腹を壊したり発熱したり食欲不振になったり・・・ということが起こります。

<風邪引いた時、漢方での考え方>
原因:
体がフウジャを防御できなくなっている
入ってきたフウジャを追い出す力がない

対策:
まず入ってきたフウジャを追い出す
何度もフウジャが入ってくるなら防御力を上げる

ここで、風邪のときよく使われる、漢方薬の中でも一番有名な処方が「葛根湯(カッコントウ)」です。病院でも処方されるし、ドラッグストアでも薬局でも購入できます。この葛根湯がフウジャに対してどのように効くのかはさておき、葛根湯は「寒気のする風邪」によく効きます。寒気がない場合は効かないか悪化します。

漢方では「証(ショウ)」という概念があり、体質やタイプというのがわかりやすいかと思いますがその人の「証」の見極めがとっても大事になってきます。証の見極めが違うと漢方薬が功を奏しませんし、そこが漢方医の腕の見せ所でもあります。風邪を引いたときは葛根湯がいいよ、などとよく言われますが、本当に大事なのはその人の証。その人の体質とか、その人の体の中にどのような邪が侵入しているのかが大事です。風邪引いて寒気がある場合、その寒気の有無こそが証の見極めの一つになり、選択肢として葛根湯良いかもね、ということになります。日々の食事に冷たいものが多いと、寒邪が入りやすくなります。この指導も総合的に行います。

この「証」という考え方をマネジメントの場面で考えてみましょう。部下が取引先に迷惑をかけ、上司であるあなたにクレームがありました。

原因:部下が取引先に迷惑をかけたためクレームが入った
対策:①今来ているクレームの対応②クレームが入らないようにする

証の見極めが必要なのは対策②
あなたはその部下に対して何と伝えますか?

ここであなたがするべきことは「証の見極め」です。証というのは体質やタイプのことでした。マネジメントの場面に置き換えると証は例えばこんな意味になるのではないでしょうか、部下の考え方(視点)や人柄。その部下がどのような視点からものを見ていて、どのように取引先のことを考えていて、どのような伝え方をされるとクレームを成長の糧にできるのか、ということ。

それには①クレームの対応も重要です。取引先にただ謝るのがあなたの仕事ではないのです。何がクレームに繋がったのか?を多層構造的に見極めます。もしかしたら部下は部下なりに良いと思ったことをしたのかもしれません。社内の慣習や風土が影響しているかもしれません。しかしながら結果的にクレームとなっているので、まず部下が良かれと思ったことを認めてあげること、そして、その結果クレームが来たのだから、次回からどういった対応をする必要があるのかを建設的に話し合うこと。さらに社内の慣習や風土が絡むならそこにも切り込んでいく必要があります。これこそが、漢方的マネジメント論。ご参考になれば嬉しいです。